京都の暮らしの中には「ハレ(祭りや行事)」と「ケ(日常)」を使い分ける文化があります。そして、四季折々に祭りがあり、「祭りのない日はない」と言われるほどに「ハレの日」が生活に根付づいている街でもあります。結婚や成人、出産など人生の節目を祝う特別な瞬間はもちろん、自分の心だけが知っている小さな門出に、ハレの日で溢れる京都の街へ、特別な何かを見つける旅に出かけませんか? 今回は、ハレの日から連想した和語「むすぶ」「のびる」「めぶく」を手掛かりに、京都の暮らしに息づく一生もの、そして日常をときめかせる逸品をご紹介します。


ハレの日に新調したい京都の品「むすぶ」
人と人の縁を結び、離れたものをそっとつなぎとめ、想いを束ねて結束し、やがて実りへと導く……。「むすぶ」という行為には、形だけではなく、心の奥で静かに交わされるやさしさが宿っています。通じ合えたと感じたときのあたたかい気持ちは、きっと心が結ばれた証。京都には、そんなぬくもりを大切にしながら受け継がれてきた手仕事や品々があります。ここでは「むすぶ」という言葉から連想した、京都生まれの品々をご紹介します。
【STOCK】
〜 店主が心で選ぶ セレクト雑貨ショップの人気モノ。 〜
宮廷文化の中で生まれた「京指物(きょうさしもの)」。釘や接着剤を使わず、木と木を「指し合わせる」木工技法です。いま、京都市内の工房で「指物」の技術を礎に、木のテーブルウェアを制作している莊司晶さん。とくに注目を集めているのが古典装飾の結び飾りをモチーフにした鍋敷きです。使っている「キハダ」は、淡い黄白色で年輪がわかりやすく、経年とともに色の変化が美しい材。刃の削り跡を残しつつ、なめらかに整えられた表面は触り心地がよく、使うほどに愛着が湧いてきます。【STOCK】では他に麦藁手、細とくさの伝統文様を描いた瀬戸焼の夫婦茶碗や現在は海外に活躍の場を移したアーティストの希少なプロダクトなど店主の確かな目で選ばれたアイテムが揃います。

【むす美®】〜一枚の布を結んで広がる 創造的な世界。〜
現代の暮らしに「ふろしき」を取り入れてみたら、なんと軽やかなことでしょう。普段の買い物に、旅先での洗濯物の仕分けに、衣替えを待つ衣服の収納に。使わないときは畳んでしまえば省スペースで無駄がありません。「むす美®」では柄・素材・撥水加工など多彩な種類が揃い、手触りや大きさを確かめながら自分だけの一枚を選べます。

【片山文三郎商店】〜伝統の絞り染めが作り出す、革新的な造形〜
鉛筆の下絵を専門の道具で点描し、その輪郭に沿って糸を縫い、縫い目を絞り、染める。染めたあとに結んだ糸を解けば、深みと奥行きのある色彩、元は一枚の布であったことを忘れるユニークな造形が生まれます。築90年の京町家にある京都本店には、伝統の技と現代アートの表現を融合させた独創的なアイテムがずらりと並びます。

【堺町御門前 平七】〜古と今を結ぶ。宮廷装束の有職裂。〜
葵祭や時代祭に携わる装束を扱う傍で、日常で使える小物等を製作する「堺町御門前 平七」。宮廷装束を調進する際の貴重な有職裂で拵えた名刺入れや袋ものは、ハレの日にふさわしい逸品です。絹の手触りを確かめ、まったく同じものは作れないという織柄を見比べる。足を運んで選ぶ価値を感じるお店です。写真は十二単に使われる五衣の織物を重ねた「重-KASANE-」。

【黒香師工房】〜結んだ髪に、やんごとなきバレッタを。〜
京都の伝統が息づく西陣織で、オリジナル生地を織り上げるところから製作したバレッタ。金糸・銀糸を織り込み、縦の糸と横の糸の交わりが生み出す紋様から、煌めきを放ちます。一見すると控えめで上品。それでいて角度を変えるごとに光を集めてきらりと輝く。静かな存在感がハレの日の慶びを引き立ててくれる髪飾りです。※実店舗への来店は予約制

【八代目儀兵衛】〜噛むほどに、米本来の上質な甘さ。〜
丁寧に育てられたお米の、噛むほどに広がるやさしい甘さ。ハレの日の食卓を支えるのは、やはりおいしいごはんです。食卓を彩るお米(二合分)を風呂敷で包んだ「ほんの気持ち米」は、感謝の気持ちをさりげなく伝えるのにぴったりな贈り物。ふっくらと炊き上げたお米をきゅっと握っておむすびにすれば、それだけで立派なご馳走です。※ギフト商品は通信販売のみ

【POJ Studio】〜暮らしに寄り添う、工芸のかたち〜
築100年以上の町家を拠点に、日本各地の職人が受け継いできた伝統技術を、現代の暮らしへとつなぐセレクトショップ。素材や技法だけではなく、その背景にある作り手の思いを大切に、日常に溶け込む工芸品を紹介しています。一枚の布から生まれる「刺し子あずまバッグ」をはじめ、時代を超えた実用性を持つアイテムが揃います。
ハレの日に新調したい京都の品「むすぶ」マップ
ハレの日に新調したい京都の品「のびる」
竹のようにまっすぐに成長しながら、ときには力を抜き、心をゆるめる——。「のびる」には、前向きに進歩するという意味と、緊張が解けて、のんびりと安らぐという意味があります。新しい環境へと踏み出す節目には、期待とともに不安や緊張も生まれるもの。心がドキドキして落ち着かないとき、まっすぐ進みすぎて少し疲れたとき。暮らしの片隅にある京都の銘品たちが、静かな自信と癒しを与えてくれるはずです。
【京都三条竹松】
〜 すこやかに成長する竹を日用品に、職人の繊細な手技とアイデアが光る。 〜
所狭しと並ぶ商品は細々とした竹製品を中心に多種多様。一つひとつに個性があり、棚をのぞき込むたびに小さな発見がある。まるでお宝探しをしているかのような気分にさせてくれる。「京都三条竹松」は、そんな楽しさに満ちた店です。
昭和18年の創業以来、竹を知り尽くした竹工芸・竹細工の専門店として、祇園の料亭で愛用される箸や、職人技が光る極細のつまようじをはじめ、確かな技術に裏打ちされた品々を扱っています。なかでもハレの日に新調したいものを2つ選ぶとすれば、まずは箸。先端へすっと細くのびる形は見た目に美しく、実際に手にすれば使い心地のよさに思わずうなずいてしまいます。そして、おめでたい席にふさわしい青竹の酒器。時間とともに色があせてしまう青竹の一瞬の美しさは、ハレの日の食卓に品格を与えてくれます。

【京都 山城】〜ひとことでは語れぬ、楊柳生地。〜
強く撚りをかけた横糸と弱い撚りの縦糸を織ることで、生地に特有のしぼ(凹凸)が生まれる楊柳生地(京ちぢみ)。天然素材も、表面のしぼのおかげでよく伸び、肌にはりつきにくく、通気性の良さが魅力です。最初の一着としておすすめなのはUV加工されたアームカバー。汗ばむ季節も爽やかに、紫外線からお肌をガードしてくれます。

【高野竹工】〜竹の美がつくる丁寧な暮らし。〜
竹の産地として名高い京都・西山乙訓エリアに工房を構える高野竹工。茶道具から暮らしの道具まで上質な製品づくりに定評があります。多種多様な竹を扱うなかでも「真竹」は竹林の整備から自社で行い、手間暇をかけて良質な竹材へと製材。素材である竹に真摯に向き合い、まっすぐに伸びる"竹の美"を身近な商品として届けてくれます。

【三浦照明株式会社】〜職人の手と想像力が創り出す京のあかり。〜
祇園の街で約100年、和のあかりを作り続ける専門店。その仕事ぶりは丁寧かつ繊細。そしてアイデアに満ちています。例えば写真の「筒型二本脚行灯」は、まっすぐ上に伸びる秋田杉の良材を、釘を使わず指物技法で組み上げたもの。細い二本脚の内部に電気配線を通す巧みさには脱帽します。実用と美を備えた、心あたたまる灯りです。

【京都しるく】〜肌にふれるものこそ、上質に。〜
心身を解き放ち、ひとり時間を楽しむバスタイム。その安らぎのひとときにこそ、"ハレ"の気分を添えたいものです。京都・丹後の職人が特別な技法で織り上げたシルク100%の「マシュマロしるくボディタオル」は、凹凸のある織りが特長。シルクの繊細な繊維が、きめ細かな泡で汚れや古い角質を落としながら、肌表面をなめらかに磨き整えます。

【ギャラリー遊形】〜のびやかに、名旅館のくつろぎ着。〜
憧れの宿・俵屋旅館が手がける「ギャラリー遊形」には、"より清潔に、快適に、美しく"という宿の美意識を映す、オリジナル商品が並びます。宿でも使われている「ナイティ」は、肌に触れる裏地は綿100%のオリジナルガーゼ、表は保湿性に優れたヘリンボーン生地で仕立てたもの。洗うほどに柔らかさが増し、穏やかな温もりが肌を包みます。

【Ren】〜予約してでも訪れたい金工の工房。〜
素材に触れて変化を感じながら手を動かし、一枚の金属板から薬缶や鍋、ドリップポットなどの美しい造形を創りだす。金工・中根 嶺(れん)さんの作品は、薬缶の取手をつなぐ小さなパーツまですべて手作りで、どこから見てもほれぼれとする美しさ。コンロの上にあるだけで、周りの景色まで変えてしまうような特別感があります。※オープンスタジオや展示の日のみ工房を一般に解放 ※実店舗への来訪は要予約
ハレの日に新調したい京都の品「のびる」マップ
ハレの日に新調したい京都の品「めぶく」
小さな兆しが芽を出し、やがて思い描いた姿となる……。「めぶく」という言葉には、始まりの気配と希望が宿っています。新しい命、新しい暮らし、新しい気持ちが生まれる節目の日に迎える品は、未来へ向かう想いをそっと後押ししてくれる存在であってほしいもの。京都には、培われた技と感性の中から、まさに新芽が芽吹くように生まれてきた品々があります。「めぶく」という言葉に重ねて選んだ京都の逸品が、新しい感性の芽生えに役立ちますように。
【LE SILLAGE FRAGRANCE SHOP KYOTO】
〜 深呼吸すれば、新しい感性が芽吹く、気持ちを昂揚させてくれる特別な香り。 〜
ひっそりと佇む京町家で営む香水の店「LE SILLAGE FRAGRANCE SHOP KYOTO」。暖簾をくぐると、まるで博物館のように知と感性に満ちた香りの世界が広がります。並ぶ香水の多くは、日本ではここだけが扱う希少なもの。香りを"纏うアート"と捉える調香師や、希少性を重んじるブランドから選ばれた存在だからこそ実現するラインナップです。
そして、特筆すべきは博識なコンシェルジュの存在。「恋心が芽生えた瞬間の甘い香り」「新しい環境で背中を押してくれる香り」といった抽象的な相談から、香調や持続性など具体的な要望まで、500種を超える香りの中から数本を選び抜き、最適な一本へと導いてくれます。
坪庭で香りを試せるのも京都の店らしい趣。店名が示す"余韻=SILLAGE"のように、そっと記憶に残る香りを探しに訪れてみて。

【PONTE】〜草花を引き立てる、透明の存在感。〜
光を透過し、反射する。造形中の赤く融けている状態と、完成したときの冷たい印象。さまざまな顔を持つガラスという唯一無二の素材に挑むガラス作家、佐藤 聡さんの工房兼ショップ。存在感のある大きめの作品から手で持って帰れるグラスや花瓶までさまざまな商品が揃います。

【公長斎小菅】〜凛として美しい、繊細な竹の曲線。〜
駿河千筋細工の特徴は、角をとってまるく仕上げた竹ひご。その細くしなやかな丸ひごで編まれた「駿河千筋つぼみ花入」は、美しく、繊細な竹ひごが生み出す、丸みのあるフォルムが魅力です。天然の素材を生かしたシンプルなデザインは、草花の瑞々しさを引き立てます。日常の空間にそっと置いて、季節の"芽生え"を感じてみてください。

【花政】〜160年の目利きが、一輪に宿る。〜
花一輪とっても、色や形の美しさ、花持ちのよさにはいつも驚かされます。旅先で花を求めるのは贅沢ですが、ハレの日なら味わってみたいもの。持ち帰りやすい「小庭」は、小さな鉢に庭の景色を映したもの。窓辺に置くだけで、都会では得がたい"庭"の気配が日常に生まれ、ふだんの暮らしにも、穏やかな景色を添えてくれます。

【有次】〜老舗庖丁店が勧める、長く切れ味を保つまな板。〜
1560年の創業以来、伝統の手技で包丁をはじめとした料理道具を作り続けてきた「有次」。その老舗が扱うまな板の材は、イチョウ。適度に天然の油分を含むため水切れがよく、汚れにくく、復元力もあり、何より刃当たりのやさしいところがまな板として適材です。長年使ってキズがついても、削り直してもらえるのもうれしい(有料)。

【ウケンムケン】〜作家の指先から生まれる"芽生え"のジュエリー。〜
京都御所の南で工房兼ショップを構える「ウケンムケン」。鴨川を歩いて見つけた草花や、童話に出てくる動物など小さなものへの愛情に満ちた眼差しが、温かみと物語性のある作品を生み出します。店頭に立つ作家の平良タイジュさんとの会話を楽しみながら買い物ができるのも魅力。ハレの日に向けたオーダーメイド作品の注文も可能です。

【日吉屋】〜伝統美の象徴、京和傘を持つことの意義。〜
世代を超えて受け継がれてきた"用の美"を体現する京和傘。その現存する唯一の製造元が「日吉屋」です。骨組みは竹、糸、木とシンプルでいて上質。30〜70本の繊細な竹骨のシルエットは、持つ人に品格と自信を与えてくれます。傘の部分は手漉きの和紙、布、透明のビニールなど多彩。芽吹きを思わせる鶯色の和日傘は、2026年の新作です。
ハレの日に新調したい京都の品「めぶく」マップ
ハレの日を祝う神社
京都には、人生の節目を静かに見守り、心を整えてくれる神社が数多くあります。澄んだ空気の中で手を合わせると、ハレの日を迎える喜びが、静かに胸のうちに満ちていくよう……。古来、人々が願いや祈りを託してきた神社は、今も変わらず、日々の暮らしに寄り添いながら、その瞬間をそっと祝福してくれる存在。ここでは、そんな京都の神社の中で、「むすぶ」「のびる」「めぶく」のテーマにちなんで、「下鴨神社」「三宅八幡宮」「わら天神宮」をご紹介します。
※写真・イラストはイメージです。
※掲載内容は2026年1月30日時点の情報です。












